時の流れ・時代の移り変わり
ファクトリ・ギアはその一部始終を知る
「たまには箸休め・メカニック橋本コラム」
突如として弊社にやってきたのは、MAHLE製の古いエアーフィックス。
現在ではなかなか目にすることのない、年季の入ったタイヤインフレータです。長い年月を過ごしたその姿は、まさに「古びた」という表現が当てはまる状況でした(画像残し忘れ悔やまれます。)
汚れ・埃・錆が目立ち、当然ながらそのままでは現役復帰とは縁遠い現状でした。
このマーレー製エアーフィックス、実はちょっと特別な出自があります。
弊社社長が、かねてから崇拝する自動車工場の社長。
その工場で長年使われていたものが、役目を終えた状態で残されていました。それが縁あって弊社へやってきました。
まずは分解し、長い年月の間に蓄積された汚れやサビ、劣化した部分を一つひとつ確認。使える部品、手を入れるべき部品を見極めながら、できる限り当時の雰囲気を残すことを意識してレストレーションを進めます。新しいものに交換してしまえば簡単ですが、今回の目的は「新品にすること」では無く現役に復帰させること。
長い時間を生きてきた道具を、もう一度使える状態に戻すこと。そこに意味があります。

作業を終えたエアーフィックスを見た社長から、こんな言葉が出ました。
「昔、欲しかったんだ。でも買えなかった。高額だったから」
この一言には、驚かされました。
今のレッドポイントを知る人なら、社長が設備投資に対して非常に積極的であることはご存じかもしれません。必要だと判断した設備には投資を惜しまず、より良い仕事をするためなら新しい機械や工具を積極的に導入する。そんな現在の姿からは、かつて一台のインフレータの価格を前にして、購入を躊躇した時代があったことはなかなか想像できません。
しかし、考えてみれば当然のことなのかもしれません。
今では当たり前のように工場に並ぶ設備も、最初から揃っていたわけではありません。会社が成長し、仕事の幅が広がり、必要な設備を一つずつ増やしてきた。その過程には、「欲しいけれど、今は買えない」という判断をした時代もあったはずです。
だからこそ、今回のエアーフィックスには少し特別な意味があります。
それは単なる古い工具ではなく、当時の自動車整備工場の空気を残した道具。そして、現在のレッドポイントへと続く時間の一端を感じさせてくれる存在です。
ピカピカの最新設備には、最新設備ならではの価値があります。一方で、長い年月を経た工具には、新品にはない説得力があります。傷や汚れ、使い込まれた跡、その一つひとつが「誰かがこの道具を使って仕事をしてきた」という証だからです。
レストレーションを終え、再び使える状態になったMAHLEのエアーフィックス。

これからは弊社工場で、もう一度常用の道具として活躍してもらいます。
そして何より、この道具を眺めながら「昔、欲しかったんだ」と語る社長の姿に、レッドポイントの歴史を感じました。
買えなかった頃がどんな時代だったのか。私の時系列で紐解くと。。
古い写真を引っ張り出しました。


おそらく、この時代ではないかと思いを馳せます。

設備への投資を惜しまない現在の姿も、かつて「欲しかったけれど買えなかった」という経験があったからこそなのかもしれません。
古い道具を蘇らせる。
それは機械を直すだけではなく、そこに刻まれた時間まで蘇らせる作業なのだと思います。
旧いものも現役で。念頭に置くスタンスです。
MAHLEのエアーフィックス、再び現役です。
Written by Hashimoto


