アルファロメオ GT JTS 特定のシリンダのミスファイア トラブル 1歩前進か?

お預り中車輌のレポートを兼ねてお伝えします。

車輌はアルファロメオGT JTS セレスピード 走行距離 約75000Km
ずいぶんと前から、急加速時にエンジンより大きな息継ぎが発生し、それと同時に警告灯が点灯し
エラーメッセージを表示する。といった内容です。
症状が悪化すると、加速の度に発生する為にスピードを上げて走行するのが困難な状態。
トラブルコードは P0300と P0301の二つが入力され、どちらもミスファイアを意味する物。

P0300はミスファイア(不特定の)
P0301は 1番シリンダミスファイア
という具合に、

この手のトラブルとして多いのは、イグニッションコイルの不具合や点火プラグの不良が思い当たります。
実際に、JTSエンジンに装着されるコイルは年数・距離に問わず損傷を受けやすい実例もあり。

診ておくべき点をチェックするものの、改善の変化が現れない為、今回は以下の内容を実施しました。
CIMG0243 CIMG0253
まず、インテークマニホールドチャンバーを取り外します。
エンジン搭載状態でのこの付近の分解は非常に作業性が悪く、スムーズに作業は流れません。

この後、アルミのインテークマニホールドを取り外し、その後に鬼門 直噴インジェクタノズルを取り外すのです。
作業中の画像は...作業に没頭し撮れていません。

肝心なのはここからです。
CIMG0126 CIMG0129

直噴ノズルの単体テストを行なってみたくなりました。
私の推測からするに、ミスファイアのエラーが入り続けるにもかかわらず、点火系統に不具合は無い、となれば
点火の次に怪しいのはノズルの不具合だと疑いました。

内燃機関にとっての3台要素を思い出しましょう。
「良い点火」「良い圧縮」「良い混合気」です。
圧縮の状態点検は、画像がありませんが コンプレッションロステスト を行っています。
全く問題の無い状態でした。
そして、点火コイルやスパークプラグは単体チェックやテスタ診断の結果異常無し。
残されるのは、燃料噴射システムです。

といった理由から上の画像にもあります、ノズル単体テストに踏み切ったというわけです。

直噴ノズルの単体テストを施工するには、以前より使用中のインジェクタテスタでは無く、そこへ接続し拡張機能を
持たせる別箱が必要になります。
燃圧・パルス共に通常のインジェクターとは異なるからですね。
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点検を進めますが、これだ!と断定できる決定打がみつかりません。
初めて使用する機能・テスタですので、色々と試してみました。
手持ちの同型車のノズルも合わせて比較を行います。

特に、中速からの高負荷を再現させる周期でのテストに重点を置きました。

スプレーパターン・噴射量・リークテスト・抵抗値測定などを一連の流れで点検を行います。

決定的な確証を持てぬまま、超音波での洗浄に入ります。
ここで、ようやく変化が現れます。
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インジェクタノズルの超音波洗浄は、超音波のバスタブと、ノズルの開閉パルスの同調により、通常のガソリンの流れとは
逆で下側から上側へ洗浄液が上がってくるのです。
しばらく洗浄を行い、それぞれの進行具合を見ると不具合の発生していたシリンダは洗浄液が上に上がりません。
手持ちのノズルも合わせてチェックしましたが、こちらにも同じ結果の物が1つあります。

これを判断基準にすべきか?悩むところではありますが前に進みましょう。

高圧インジェクターのシリンダ側のシールです。
専用ツールによる組み付けが必要で、ノズルに通した後は再度別のツールにより形を馴染ませます。
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各部のシールリングや、ノズル入り口のフィルターを交換し、組み付け作業に移ります。

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しかし作業性が悪い。組み付けの間は殆んどエンジンの上に乗った状態でなければ各部にてが入りません。
真夏なら、大汗が流れる作業です。

一通りの組み付けを終え、作業前に残しておいたダイナモグラフに重ねて計測してみます。
セレスピードは、ダイナモ上で走行する事は出来てもダイナモとしての正しい計測はできません。
あくまで、作業前の不具合状況の発生周期や頻度をデータとして残す為の物です。
ダイナモ

正確な計測では無い為、何馬力なのか?を計算する事はできませんが大体の数値で表すならば、
作業前:95馬力
作業後:160馬力 となります。

エラーの入力も現在の所再発せず、走行状態においても以前とは比べ物にならぬ走りを体感出来ます。

今回のケースは、トラブルシュート作業のひとこまをお送りしました。
車の不調・不具合は個体により様々ですので、その車に合わせた診断が必要となります。

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