RF4C ルーテシア3RS トラブルシュート
何かがおかしいと思ったらやっぱり!


ご新規様のルーテシア3RS(ABA-RF4C)の車両点検を行っています。新車からワンオーナー、走行距離は8万キロ台です。
ボンネットを開けた瞬間に視界に映ったのが、画像中央の劣化したコルゲートチューブでした。劣化箇所はこの部分のみです。沢山の同型車を見てきましたが、ここまでの状況は初めてです。

何かあるかも?と思いながらも、まずは通常通りの診断を行いました。サスペンション関連や電気系統をはじめとし、いつもの基本点検を行います。
コンディションとしては悪くは無く、基本整備できっちりと復活するだろうと思い、試運転に出掛けます。
走行の印象は「エンジンに力が無い」そこがとても気になりました。工場に戻り、アイドリングで置いておくとエンジン本体は静かに回っているのですが、マフラーエンドから定期的に「ポンポンッ」と軽快な不整脈音を発しています。

これらの症状については、お預かりの際にお客様からの不具合事項としては伺っていませんでしたので、気になってその事をお伝えすると「実は気になっていた」とのご回答でした。
もしかすると「こんなもの」と思いながらも諦めてみえたのかもしれません。

この状態が尾を引いたまま、メンテナンスをご案内するわけにはいきませんので、まずはおおよその状況を掴むべくトラブルシュートを行います。

コルゲートが異常に劣化した原因として考えられるのは、燃焼温度の異常の有無です。コルゲートのすぐ下側はエキゾーストマニホールドがありますので、異常燃焼をしていれば排気温度が上昇し、それによりコルゲートを痛める可能性が有ります。
温度測定を行うと、中央付近の排気管は300℃を越える高温状態となっていました。アイドリング状態でこの温度は正常ではありません。

異常燃焼の原因として、点火不良も想定できます。とは言ってもミスファイアと言える程の、バラツキは発生していません。点火系統のピーク電圧もバラツキはあるものの、測定時の誤差の方が大きそうです。スパークプラグは、オイル燃焼気味なのか、全体に燃えたオイルのカスが付着していました。エンジンオイルレベルもレベルゲージの下に少し着く程度までレベル低下しています。

オイル消費もなかなか深刻なレベルまで進行していそうです。

ルーテシア3RSでここまで診断する必要性が出るのは初めてですが、エンジンの機械的損失を調べる事にしました。
コンプレション・ロス・テストを行います。

(コンプレション・ロステストとは。)

スパークプラグを取り外し、シリンダに対して1気筒ずつ、テスタを介して圧縮空気を送り込みます。
この時、試験を行うシリンダは圧縮上死点にしておきます。

圧縮上死点とは...
「インテークバルブよりシリンダ内に吸い込まれた混合気が、上昇行程にあるピストンにより最大圧まで高められた状態。すなわち吸入・排気どちらのバルブも閉じ、ピストンが最も高い位置にいる状態の事」
(ちなみに、この混合気への点火は上死点の少し手前で行われる)

この状態の燃焼室内へ圧縮空気を入れることにより、何パーセントの空気がリークするのかを判断する為のテストがコンプレッションロステストです。

注入した空気が、スロットルボディから「ス~」っと漏れていれば、インテークバルブの気密が保たれていないと判断出来ます。
排気出口からの漏れならば、エキゾーストバルブの気密不良。
オイルフィラーキャップより漏れていれば、ピストンリングの損傷。
と、判断の仕方が色々とあります。
また、隣り合うシリンダで漏れていたりすると、ヘッドガスケット。。。などなど。
ケースバイケースの判断が必要となってきます。

1番シリンダ  ロス値 10%

3番シリンダ  ロス値 10%

4番シリンダ  ロス値 10%

ここまではバラつきは無く、最後のシリンダを測定します。
2番シリンダ  ロス値 20%  んん??20パーセント~?最後の最後に何かを現しました。
(ちなみに、1-2-3-4と行わないのは、点火順序が1-3-4-2 だからです。)


おおよその原因の絞り込みはできました。2番シリンダの圧縮漏れ・隣の1番シリンダに圧縮エアが盛大に漏れてきます。エンジンの機械的損失ですね。

これまで大切に維持管理をされてきた車両だけに、どの様なご案内が最善なのか悩むところです。
お客様との打ち合わせを行います。

Written by Hashimoto

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