空燃比を測る・そこから見えてくるもの
空燃比計はメーターではなく診断機です


A/Fメーター=空燃比計
空燃比計とは見えない燃焼状態を、数値化するためのアイテムです。

エンジンの調子を判断するとき、さまざまな情報を頼りにします。
アイドリングの安定性、アクセルに対するレスポンス、エンジン音、排気ガスの状態、そして実際に走らせたときのフィーリング。
メカニック経験や感覚も重要な判断材料です。
しかし、どれだけ調子が良さそうに感じても、ひとつだけ簡単には確認できないものがあります。
それが、「実際にどんな空燃比で燃焼しているのか」という情報です。
空燃比とは、エンジンに取り込まれた空気と燃料の割合。
エンジンがどのような状態で燃焼しているのかを知るための、非常に重要な情報です。
そこで今回取り付けるのが、空燃比計です。

数値が小さければ小さいほど、燃料比率が多い。
すなわちガソリンが濃いという事になり、数値が大きくなれば空気の方が多い。すなわちガソリンが薄い事を意味します。

空燃比計を取り付けると、走行中の空燃比をリアルタイムで確認できるようになります。
アイドリングではどうなのか。
アクセルを踏み込んだ瞬間はどう変化するのか。
一定速度で巡航しているときはどうなのか。
そして、高負荷・高回転ではどうなのか。
エンジンの状態が変化するたびに、表示される数値も変化していきます。
エンジンは常に同じ条件で燃焼しているわけではありません。
始動時、アイドリング、巡航、加速、そして全開走行。
それぞれの場面で燃料の要求は変化します。
つまり空燃比計は、単に数字を表示するためのメーターではありません。
「エンジンが今、どのような状態で燃焼しているのかを知るための情報源」であります。

整備において難しいのは、症状が出ていない車を判断することです。
「少し燃料が濃いような気がする」
「高回転で少し重い気がする」
「アクセルを踏み込んだときの反応が、もう少し良くてもいい気がする」
こうした感覚は、メカニックにとって重要な情報です。
しかし、感覚だけでは、その先に進むことができません。そこで空燃比を測定します。

例えば、通常走行では問題のない数値を示していても、アクセルを大きく開けた瞬間に空燃比が大きく変化しているかもしれません。
あるいは、高負荷域で想定以上に濃い状態になっているかもしれません。
反対に、必要な燃料が十分に供給されず、薄い状態になっている可能性もあります。
燃圧・インジェクター・吸入空気量・センサー類・吸気系の状態など、さまざまな要素が燃焼状態に影響します。
だからこそ、「そう感じる」から「実際にこうなっている」へ。
感覚を数字に置き換えることで、初めて見えてくるものがあります。
空燃比を測定することは、エンジンを調整するためだけではありません。

エンジンの状態を知り、必要な整備を判断するための材料を増やすこと。
そこに大きな意味があります。

空燃比計を取り付けたからといって、エンジンの性能が上がるわけではありません。
しかし、これまで見ることのできなかった情報を、数字として確認できるようになります。
「調子が良い」「少し気になる」「もう少し煮詰めたい」感覚的な判断に、ひとつの確かな情報を加えることができる。
それによって、必要な整備は何なのか。その判断がより明確になっていきます。
車の整備は、部品を交換することだけではありません。状態を知り、原因を考え、必要なところに手を入れる。
そのためには、できるだけ多くの情報を得ることが重要です。
空燃比計は、そのためのひとつの道具。メーターを取り付けることが目的ではなく、
「見えない燃焼を、数字で見る。」
その先にある、より確かな診断と整備のために取り付けるものであると解釈できます。

空燃比計の取り付け後の走行中に得られる情報は、面白く興味深いものです。
運転していると「ん?」と思うことがあります。
例えば「気のせい」レベルのわずかな回転変動と、息継ぎというレベルではない乱れ。
これらすべてに理由があり、その制御ををECUが燃調補正として行い、その変化は即座に排気ガスに現れるという事。
時間差はほぼなく、人があれ?と思う瞬間に空燃比計に数値として現れます。

O2センサーが行う、微量な燃調補正がありますが、この変化さえも空燃比に同期して表示されます。
ワイドバンドラムダと言って、電流制御式センサがいかにピックアップが良いのかを物語っています。

クリオ3やアバルト、これらに空燃比計を取り付ける事で、これまでは可視化できなかったことが明らかになり、調子を常に見張る面白さが見いだされるはず。
楽しい車にこそ、空燃比計を。
そんな思いと、勉強に繋がる今回のセットアップとなりました。
Written by Hashimoto