シンクロ不具合・ギヤ鳴り ストレス溜る症状です
ルーテシア3RS ミッション・オーバーホール


4速ギヤは上げも下げも「ギャッ」とギヤ鳴りをするルーテシア3RSは、ミッションオーバーホールの為に作業を開始しています。

トランスミッションを降ろし、スタンドへの設置を完了しました。

アウターケースを取り外して、ミッション内部の点検から始めます。


ピンクマークは「このワッシャどこのだっけ!?」を防ぐ覚え書きです。

この穴の中にも紛失しそうなスプリングワッシャが仕込まれています。

こういう所って、気付かずに洗浄を進めると知らぬ間になくなっていて、組付け時にもその存在を知らずに組付けそうになる物。
とても危ない要注意ポイントです。

ギヤ鳴りの原因は、シンクロの消耗であるのは間違い無いです。
分解前に、ギヤシャフトを洗浄し、点検を行います。
オイルでベタベタしているより、キレイな方が作業がスムーズに行えます。

ここが該当する不具合箇所。

4速ギヤのシンクロハブ・シンクロリングです。
シンクロハブを手で持ち上げると、シンクロリングも上に上がるのですが、その際に全く隙間が無くなる事が分かります。

正常な状態の6速ギヤの同じ箇所を同様にチェックすると。
シンクロリングとギヤの間には隙間が出来る事が確認出来ます。

ここに隙間が生まれることが、シンクロリングが正常である証です。

トップのベアリングを抜き取り、不具合箇所の修理を進めます。

今回は、新たにツールを作成しました。
ルーテシア3RSのTL4ミッションの分解時には、先述のトップベアリングを取り外す前に強固に締まったボルトを外す必要が有ります。

調べてみると、SSTが存在する様ですが直ぐには入手が難しそうである事が分かりました。
海外から取り寄せると、今回の作業にあたって使用出来ないので、材料を探して製作する事にしました。

必要な内容は、メンドラのスプラインに勘合し、その状態をバイスで保持する事です。
適合するスプラインの材料を探し、保持用の金属スリーブを溶接します。


こういう事ですね。
材料がスムーズに見付かったことで、難無く製作する事が出来ました。

問題の箇所「4速のシンクロリング」4速ギヤに当て、単体で確認します。
先程の画像よりも、隙間が無い事がよく分かります。

ルーテシア3RSのシンクロリングは、1/2 3/4 5/6 と、異なる方式が採用されています。
1/2は、3ピースシンクロなので、構造が異なります。
画像は3/4に使われるものと5/6に使われるものです。

手前が3/4 奥が5/6 です。素材と内部のブレーキ構造が異なります。
3速と4速のギヤ鳴りは、ルーテシアではとても多い症例のひとつ。
理由は、シンクロリングに備わるブレーキ機構として貼り付けられた摩材の消耗です。
シフトフィーリングの改善を目的に、非適合なオイルを常用する事で摩材が溶ける・減る という事が理由ではないかと考えています。

一般的な真鍮製のシンクロリングに変更し、組付けを行います。
新しいシンクロリングは、ギヤ間とのクリアランスがご覧の通り余裕の隙間が出来ます。

シンクロの組み換えは一通り完了しました。

シフトセレクタレバーのオイルシールを交換。



トランスミッションは完成。コンプリート状態となり、搭載待ちです。

ミッション降ろしに伴い、先立てて分解していた左右のアクスルは洗浄を行いました。

アルミ肌の沈着汚れがきれいさっぱり除去でき、気持ちの良い仕上がりに満足!
組付け復旧時に、各部品が美しくなっているのは作業の確実性も上がり効率が良くなります。
また、不具合を見つけ易くするという事にもつながります。

組付け作業を引き続き進めて行きます。
Written by Hashimoto

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