点火系統チューニングの王道作業
オシロスコープで分かるその違い


先日、セットアップをご依頼頂いたトゥインゴ3のアップグレード作業。
その中に、エンジン点火システムの強化が含まれていました。

オシロスコープを使う事で、作業前・後の違いを眼で見て確認する事が可能です。
最近では、オシロスコープを使って点火波形を見る事は弊社においても頻度は減りました。

昔は、キャブレタ・ポイント点火の車が多かったのでアナログオシロスコープを駆使して、点火2次波形を確認し最適な点火を得られるように環境を整えたものです。

現代は、アナログよりもデジタル・オシロスコープに頼る事が多くなりました。
画面に表示されるレスポンスこそはタイムラグがあるものの、画面の停止・保存・比較・印刷 といった数値化がし易い事がメリットです。
キャブレタ車の時代では、オシロはレスポンス重視で高負荷時の一瞬の息継ぎを紐解くにはアナログが最適でありました。

トゥインゴ3に装着した V-UP16とMSA それらの効果を表示していきたいと思います。

こちらは、BOSCH FSA テスタに搭載される機能のひとつ。ユニバーサル・オシロスコープによる点火1次波形の表示です。
点火1次波形は、スパークプラグ以前の信号波形であり、先述の点火2次波形はスパークプラグにどの様な火花が飛んでいるのかを見る機能であり、それぞれに
目的が異なります。
2次波形では、エンジンが「ブォンッ」と吹き上がる瞬間に、プラグが失火していないか・火花の強さは正常か・火花の飛ぶ時間は長いか などを確認出来ます。
今現在の車に搭載される点火システムでは、2次波形を確認する事は少し難しくなっています。(ダイレクトイグニッションが主流である為)

こちらは作業前の点火信号と点火電圧を表示した画面です。
シングルスパーク・バッテリ電圧で制御を行う一般的な波形であります。

こちらは、作業後の点火信号と点火電圧を表示した画面です。
マルチスパーク・昇圧した電圧で制御を行うチューニング済の波形であります。
13.6Vと表示されていた箇所が、16.1Vと表示される様に成っています。(これがコイル電圧の昇圧結果)

マルチスパーク制御の詳細を確認するには、横軸と縦軸のスケールを変更します。
縦軸ピークを50V→200Vへ
横軸を100ms→5msへ
それぞれ調整しました。
縦のピークを抑えて、横は拡大。そんな感じです。
アイドリング時に4回のスパークを行っている事が分かります。(これがMSAによるマルチスパーク制御)

エンジン回転を上げて、3800回転以上に達するとスパーク回数に変化が出ます。
3回のスパークへと変わりました。

数年前はアイドリング5回・3800回転以上は2回 という使用でしたが、現在は4回→3回のプログラムとしています。
何かが大きく変わると言う事はありませんが、仕様変更ですね。
パーツページの商品説明とは若干異なりますがご承知おき下さい。

この様に、車の電子制御を眼で見て紐解く面白さ。
眼で見て理解するチューニングは、マニア心をくすぐるポイントであると自負しています。

今こうして、デジタルオシロを迷い無く使えるのも、20年以上前にアナログオシロを楽しみながら使った経緯があるからだと思います。
この先の車には、今まで以上に電子デバイスが満載になります。
すべての制御は電気回路が織り成す為、様々に新たな解析が必要になる事は間違いありません。
診断テスタは全てを教えてはくれませんので、オシロスコープによる診断はより一層重要になることでしょう。

技術習得に心掛け、電気に強いメカニックとして存在できると良いな。。と思う今日この頃です。
Written by Hashimoto

関連記事