ATS LSDのオーバーホール
武闘派アバルトのデフは味変も加えて


ミッショントラブルに見舞われ、ギヤボックスのオーバーホールを進行中のアバルト500.

2nd.ギヤの粉砕につき、ミッションケース内部が鉄粉で埋め尽くされた結果、LSDケース内部にも鉄粉が多量混入していた模様です。
冒頭画像は、デフプレートに残された傷跡です。
各プレートに深く刻まれた痕跡は、再使用する事は不可能な状態になっていました。
機械式 プレートLSDは、複数枚のプレートによりロック力をコントロールする様に構成されています。
プレート同士が空転する事も有れば、密着する事もあるというもの。

デフプレートの傷は、作動時に異音を発するなど、後々の事を考えると一掃しておきたい事例です。
デフケースの左右それぞれに10枚づつのプレートで構成されており、さらにはその厚みや、歯の位置によりデフの性格を決めていくという物です。

内歯と外歯の組み合わせを変える事で、LSDの効き具合を調整可能。

また、その厚みを増すほどにイニシャルトルクを増大させます。
ATSのメタル式・サイレントLSDですが、今回は「効き具合をもう少し強くしたい」というリクエストを基にプレートの組み合わせに変化をつけます。

クロモリ製のデフケース内部は綺麗な状態です。

LSDの組み立てを行い、最重要項目のイニシャルトルクの測定を行います。
プレートの組み方に間違いがあると、この時に正常な計測を行えません。

トルクレンチにより、イニシャルトルクの測定を行いますが、デジタルトルクレンチがとても便利です。
細かな数値を確認でき、なおかつトルク上下動の平均値を見やすいというメリットがあります。

ミッションケース内に仮置きし、サイドクリアランス調整を行います。

サイドクリアランスは、ミッションケース内でデフ本体に組まれたベアリングの効き具合を調整する事。
キツ過ぎると、回転抵抗になり、ベアリングに負担が掛かります。
逆にユル過ぎると、デフ本体がミッションケース内で遊ぶ事になり、異音などの原因になります。

プリロード調整を終え、リングギヤを装着しこの後に各ギヤを組み立てます。



USEDベースとは思えぬ、美しく信頼性の高いギヤボックスの完成です。

車輛への搭載はもう少し先になりそうですが、この間に半年以上もお待ち頂いた車両のクラッチ関連メンテナンスをスタートします。
ヘビーな作業が盛り沢山続きます。
この先に控えるギヤボックス関連整備や、フライホイール関連整備が長蛇の列となりました。
今年中の完結は到底不可能・来年の作業組み立てを今のうちから綿密に組み立てています。

お待ち頂いているお客様方、急な事態以外は順番にご案内をさせて頂きますのでお待ちください。
急を要す場合は、ご相談ください。
Written by Hashimoto

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