ASNUインジェクタ・サービス って何をするの?


当社の工場2階に設置してある設備「ASNU インジェクタ ダイアグテスト&サービスシテム」を使うシーンはお客様はご覧になる事の出来ない作業風景です。
この設備を使うシーンとしては、ステージ3メンテナンスにおいて、ノズルのテスト及びクリーニングが施工可能な車種の際に用います。

普段は一連の流れをお見せすることはありませんが、今回は要所別に画像と動画を残せましたのでご紹介します。

インジェクタレールを車両から取り外します。

レールからノズルを取り外します。

可能な場合は、レールの洗浄も行っています。

洗浄前

そして洗浄後

場所を2階に移し、インジェクタサービスの開始です。
ノズルのエア抜き後に
テストステップ1「リークテスト」
リークテストとは、ノズル内部のニードルバルブが全閉できているかどうか、を確認する為に行います。
インジェクタノズルにおけるトラブルの中で最も多い事例がリーク現象です。
リークを始めると、エンジン停止後に燃料ライン圧力を保持する事が困難になります。
電子制御式燃料噴射装置の場合、フューエルラインプレッシャは高く、システムにより様々な圧力が設定されています。
私どもの扱う多くの車両では、3bar前後の圧力であることが多いです。
リークを始めると、ノズル先端より燃料が燃焼室に流れ落ち、その該当するシリンダは停止後のエンジンに燃料を送り込むことになります。
その結果、再始動を行う際にリークにより失われたラインプレッシャを昇圧する必要がある事と、ピストントップに流れ落ちた燃料による影響から始動直後にラフアイドルを示します。
リークノズルが1本であれば、1気筒だけ燃料が濃い状態となるわけです。
流れ出た燃料は、ピストンリングの隙間からオイルパンに戻っていきますから、エンジンオイルの燃料希釈によるオイル性能低下という事も併発します。

リークテスト中は、ノズルの開閉を行わず閉じた状態で規定圧力で一定時間保持ます。
その間にホールから燃料の雫が足れ落ちないかを確認します。
密閉不測の場合、この際にポタっと垂れてきます。

テストステップ2 「抵抗値測定」
続いてそれぞれのノズルの抵抗値を測定します。
ノズル開閉のメカニズムは、コイル吸引によりプランジャーを引っ張る為、抵抗値管理も大切です。すべて揃って10.4Ωと表示されています。
技術の進歩とともに、ノズルの進化は著しく変化しています。より高効率なノズルに交換し、燃焼効率を上げたい場合標準ECUを使って駆動する事を考えるとノズル単体の抵抗値を知ることは大切です。

テストステップ3「フローテスト」
これは非常に分かりやすい試験です。
スプレーパターンを確認したり、噴射量を測定します。
スプレーパターンは、17種類の条件で噴射させることが可能です。
クランキング時の噴射~高回転/高負荷に至るまで、低負荷・中負荷と様々な噴射時間・回転数を想定し、スプレーパターンを確認します。
ある特定の際に噴射が乱れる、と言った不具合を確認する事が可能です。

スプレーパターンテストを様々な条件で行う様子です。実際のテスト時間とは異なり、1セットで様々なパターンを噴射させてみました。
このテストの際に、圧力を変化させる事でプランジャーの状態把握も可能です。
以前にメガーヌ2RSで発見したのは、燃料圧力を上げた際にスプレーが瞬間停止するという事例がありました。
これは、プランジャーの吸引力が低下する事で圧力に負けてしまい、噴霧が出来なくなる状態を意味します。
実際の車両への装着状態でこの症状が起きる時は、ターボブースト発生時の最高出力近辺ですから、その際に燃料噴霧が停止すると燃焼状態としては非常に危険な状態となります。
燃焼室温度が異常上昇し、燃料が供給されないのに空気のみを吸い込む事になります。
エンジンブローに繋がるとても恐ろしい状況です。

テストステップの中で最も有効なのがフローテストとなります。

テストステップ4「噴射量測定」
それぞれのノズルの噴射量を測定するモードです。
多すぎても少なすぎても良くないのは当然ですが、エンジン始動中の回転の乱れや特定の条件下での燃焼状態の悪化を疑う場合に噴射量が正常なのか?という疑問はメカニック目線では出てきます。
しかしながらエンジンに装着された状態では、その様子を伺う事は不可能ですのでテストベンチで作動圧力と開閉信号を与えながら測定を行います。

大きな乱れも無く、全体的に噴射量が揃っています。
ここで極端に噴射量の少ないノズルが交じっていたりすると、作業前後の変化が良くわかります。

テストステップ5「超音波洗浄」
一連のテストを終えれば、ノズルフィルタを取り外して超音波による洗浄作業です。
超音波をバスタブ中で発生させながら、インジェクタノズルを3種類のパルスで作動させます。
それにより、内部に詰まった汚れを洗浄するという内容です。

動画は音声をオフにしました。
超音波の作動音が、スマホのカメラに悪影響を及ぼした様で非常にノイズが増幅され煩かったのが理由です。

洗浄を終えると、バスタブ内は濁ります。

汚れのひどいノズルのクリーニングを行うと、真っ黒に変色する事もあります。

テストステップ6「フィルターの交換」
先ほど取り外したフィルターを新調し、もう一周同じテストを行います。

テストステップ最終点検「現車による始動状態確認」

今回は、他のお店からのご依頼作業を承りました。したがって、一連の作業の後に始動チェックを行うのですが、最終作動確認は当社では行わずご依頼店様にお願いする事になります。
インジェクタノズルのクリーニング後は、なるべく早く燃料を通過させ、エンジンを始動する事が好ましいです。
ご依頼を承る場合は、到着日に作業を終え、当日出荷を行います。
全てのご依頼にお応えする事が出来ないのが現状ですので、ご期待に添えない場合がございます。

Written by Hashimoto

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