FIAT500 1.4 (16914) エンジンオーバーホール再開
久々の測定にワクワク


いざ再開!
フィアット500のエンジンオーバーホール作業です。
本当ならばもっと早めに着手すべきなのですけどね~  様々な業務を進行し、ようやく戻ってきました。
ここからは一気に進められればと考えています。106のシリンダヘッドも加工から戻ってきましたし、しばらくはエンジンに集中します。

フィアット500 1400NAのエンジン、基本はアバルトと同じ構造。

コンパクトなシリンダヘッドは、2階建て構造である事が特徴です。
なので、バルブ周りの1階部分は重量が超軽い!
片手でヒョイッと持てるという、普通車にしては稀な軽量品です。
フィアットの誇り、ファイアエンジンの派生最終形とも言えます。
加工を終えたヘッドの組み立てから始めています。

ブロック側の分解。
クランクシャフトも、メタルも距離を感じさせないほどのグッドコンディションです。
オーナーのしっかりとしたオイル管理の賜物です。
金属部品の摩耗が進行するも、しないも、オイル管理が最重要条件です。

クランクケースの徹底洗浄・オイルラインの洗浄を行い、この後はジャーナルの計測を行います。

コンロッドの大端部、メタルクリアランスの計測と合わせてメタルの交換。
そして大端部は破断断面コンロッドなのですね~!

10年ほど前にアバルトのエンジンオーバーホールを行った際に見たときは驚きました。
今では普通に普及した構造です。
流石は欧州車、早い段階で新構造を採用していたという事です。

破断断面のメリットは、組み合わせが唯一無二という事。
応力分散が理想的に行えることも特筆すべき点です。
形成後にカチ割りしていますので、逆での組み付けも不可能。逆に合わせると全く形状が合いません。


正しい方向で組み合わると、ピターーっと吸い付くように組み合わせる事が出来ます。
こういう素敵な構造、一般ユーザーさんは知る機会が無いのが残念です。
だからこそ、こういう機会に知っていただき、ご自身の車の構造に対する知識のプラスになればと思います。

ブロック側の計測開始。
クランクケースを組み付けて、新円を作ります。

プラスチゲージでは無く、ダイアルゲージとマイクロメータでメタルクリアランスを確認します。

プラスチゲージの方が楽に思えるのですが、慣れればこの方法の方が速くて確実。
整備士試験を懐かしく思います。

ピストンリングの交換・合口隙間の確認。

ピストンはグッドコンディション。
再使用しますので、徹底洗浄を行いました。
リングを外した後に残る、リング溝の奥の狭い個所にこびりついたスラッジ汚れもキレイ・サッパリと除去出来ています。
溝に汚れが残ったままですと、新しいリングを組んだ後にブロック内壁に対しての馴染みが悪くなります。


ホーニング目は均一に残っていましたが、ほんの少しだけホーニングを再施工しておきます。

普段取り組む作業とは異なりますが、やり出すと楽しくなってくる類の仕事です。
こういう作業をスムーズに施工できるのも、はるか昔に興味深くクラシックミニのエンジンに取り組めたからだと思います。
あの頃は無知なりに夢中で覚え、様々な事をボスから教わりました。
憧れたのは、何でも出来る(出来るというより、やる)メカニック。「少しは憧れに近づけたか?」と自問自答してみます。
Written by Hashimoto

関連記事