アナログこそ自動車整備の基本
車検整備でのお預かりをさせて頂くMGミジェットは、エンジン点火システムの基本調整が必要である事が明らかになりました。
電子制御でなく、全てがアナログであるいわゆる旧車。
点火システムはポイント・デスビ。燃料供給はキャブレタです。
そうなると、頼りになるのがボッシュMOTエンジンアナライザです。
埃をかぶり、日の目を浴びなくなった同機を見る事が昔は多かったです。弊社では必要に応じて使用しています。
4=気筒数
70.3=%換算したドエルアングル
1060=エンジン回転数
ドエルアングルはポイントの閉じている時間を意味します。
ドエルアングルの数値が大きいほどに、ポイントギャップは狭いという事になります。
ポイントギャップが狭いと、最良なスパークエネルギを生み出せずか細い点火を放つことになります。
広すぎてもダメ・狭すぎてもダメ。それがコンタクトポイントに求める条件です。
一般的に4気筒エンジンにおけるドエルアングルは以下が理想的とされています。
角度では54° 換算では60%
ちなみにですが、低回転時はポイントギャップが広い方が力強い火花を放ち、高回転時には狭いギャップの方が追従性が良くなります。
機械式ポイントの場合、固定数値となりますが可変ドエル制御のフルトラでは回転数に応じたドエルアングルを実現します。
今回は狭すぎるポイントギャップを拡げて、丁度良いところに調整を行う事が必要であると判断しました。
昭和的な整備の基本。ポイントの摺合せを施工。
ポイントは小さな火花を飛ばす部分であるため、電極表面は過酷な状況から焼け・凹凸が生じます。
それらを綺麗に慣らすこと。それが摺合せです。
ポイントの摺合せって何?これは私も10代の頃に疑問でした。
ポイントはデスビ内部の回転シャフト(カム)により作用します。
90度のカムがヒールを押し、その力でポイントが開閉します。
ですので、ヒールにはポイントグリスの塗布が必要です。
自分の入社した頃からある、ポイントグリス。きっとこの先も無くなることは無いでしょう。
薄くカムに塗布します。
クラシックミニとは異なり、FRレイアウトの為にポイントギャップの調整がし辛いです。
本当は60%ズバリを求めますが、これが結構難しい。
限りなく近いところで58.1%まで調整値を詰めました。
作業中に気になった、油圧計駆動用の圧力ホース付近のオイルにじみ。
これはホースバンドの増し締めで対処できた様に思えます。
ドエルアングル調子後は、トルク感がとても向上し、アイドル回転数も100回転ほど上がりました。
機械式って、素直で面白い。人の手でクルマの調子を操作できる素晴らしさは、電子制御車ではなかなか味わえない事だと思います。
Written by Hashimoto