ムルティプラ・リフレッシュ Part.2「クラッチ系統の整備」

距離を重ねれば必ず必要となる 動力伝達装置「クラッチ機構及び周辺」を作業しています。

マニュアルミッション車のクラッチ機構整備は、ディスクが減ったから交換が必要になる、という理由のみが
該当するのではありません。
クラッチカバーを押さえる部分 レリーズベアリング が破損・異音を発した場合はディスク残量がたっぷりと残っていたとしても
交換・整備は必要になります。
クラッチペダルを踏み込んだ際に「シャーッ」や「キャラキャラ」といった音を発する場合は要注意です。

クラッチの不具合を簡単に判断するセルフチェックとしましては、以下の内容があります。
ご自身の車が該当しないか、チェックしてみて下さい。

1.クラッチペダルを踏む際に、ペダルが重い
2.ペダルフルストローク時に60%程踏み込んだ後に、ペダルの重さが変わる(軽くなる)
3.半クラ時にエンジン回転に伴って異音を発する
4.ペダルを踏まずとも、異音を発する(ペダルを踏むと異音が止まる)
5.高負荷時に車速が上がらず、エンジン回転のみが上昇する

正常な車輌との比較が出来なければ、自身の状態がいかがなものかは判断し辛いですね。
何となく思い当たる場合はご相談下さい。

当ムルティプラは、症状 1.と 3.が当てはまりました。
分解前の予測から、ディスクの消耗と、ベアリング不良を想定しています。

前回の投稿の際には、トランスミションは外れています。今回はその続きからとなります。
クラッチカバーを外すと、ディスクのフェーシング面がフライホイールにくっついていました。
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ディスク表面のスリットはほぼ消えてしまっています。
十分過ぎる程に役目を終えたクラッチディスクです。
ここまで減ると、滑りも出始める頃です。良いタイミングで整備ができました。

ムルティプラに多い症状の1つとして、半クラ時のクラッチジャダーが思い当たります。
特に後退時にガクガクっと車体が揺さぶられます。
これは、フライホイールの歪みや、カバーの歪み、ディスクへのオイル付着などが考えられます。
そういった要素が無いかを点検するには、以下の様な方法があります。
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ダイヤルゲージをフライホイール平面部に当て、クランクシャフトを回転させます。
歪みがある場合は、この際にダイヤルゲージの目盛りが動きます。
今回の場合、その点に異常はありませんでした。
ムルティプラのような重い車体に、小排気量エンジンの場合半クラの使用頻度が高くなり
クラッチパーツへの負担が大きくなる為に、そういった症状が発生しやすくなります。

この段階で、もうひとつ点検できる内容があります。
クランクシャフト・スラストメタルの状態点検です。
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クランクシャフトの軸方向の遊びを点検します。
メタルの消耗が多い場合、この点検でゲージの針が大きく動きます。
この点検についても異常はありませんでした。

サブフレームを取り外した状態は作業性が良い為、マステーシリンダもこの際に交換しましょう。
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この部品が、ペダルに直結されていて油圧を生み出す源です。

クランクシャフトシールも交換します。
シールの裏側は、オイル管理の状態を判断できる場所です。
黒く染みが出来ている場合、オイル交換のスパンが永い事が多いです。
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ムルティプラのエンジン番号の打刻位置は、上側からは確認しづらい場所に打たれています。
サーモスタットの下側ですので、搭載状態で清掃するのは困難な為、この機会に綺麗にしましょう。
青色に囲んだ箇所に打刻があります。
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ディスクの消耗具合、激しいです。
今回の測定値は 6mm!
新品は 7.8mmですので、1.8mmの消耗です。
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コントロールケーブルです。
ジョイント部はプラスチックですので、消耗します。
実際に、抜けていました。オーナーさん自ら対策をしていました。
もちろん新品に交換です。
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シフト操作機構や、クラッチ操作機構のトランスミッション側をメンテナンスします。
ここには部品交換するものと、清掃や給油の必要なものと様々です。
こういった小さな作業の積み重ねが、この先の10万キロを走る上で重要となり、またフィーリング向上にも
貢献します。
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次回はタイミングベルト廻りの作業をお届けします。

 

 

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