ターボが効かないぞ→グラプン・アバルト


車検整備でのお預かりをさせて頂いているグランデプント・アバルト・エッセエッセは、試運転を行い、そこで知る「ターボが効いていない」症状。
グランデプントアバルト に搭載されるエンジンは、アバルト500と同様の1.4Tです。
刺激的なアバルトブランドを、世に広めた先駆者的なクルマ。それがグランデプントアバルトなのですね。
この以降にアバルト500~595~695と、長年に渡る生産が始まります。

「ターボが効いていないのに速く感じる」
ここが今回の落とし穴でした。
お客様から「ターボが効いていない」という声は伺っておらず、作業中の試運転においてこちらが把握した案件であります。
それもそのはず。速く走ってやろう。という思いが無く、ナチュラルに流れに乗る走行では何不自由なく走行が可能なのです。
出力チェックを行うような走行条件において、シートバックに背中が吸い込まれる加速感を得られず「あれ?何かおかしい」そう思ったのが今回の発見です。

「初期型1.4Tの圧縮比はトルク重視」
最初期の頃の1.4Tエンジンは、その後の595と比べると、圧縮比に違いがあり数値で言うと9.8と9.0の違いがある。
初期型は、ターボ頼りでなく素性頼り・後期型は、素性では無くターボ頼りである事が数値から読み取れる。
圧縮比は、エンジンの設計数値の中でも重要であり、別の角度から読み解く場合にはカムシャフトプロフィールは味付けである。
排気量はドラム・圧縮比はベース・カムシャフトはギター・エクステリアはボーカル
ロックバンドで例えるのが正しいかどうかは、定かでは無いがそんな言い換えも言われてみれば納得できる。

過給器付エンジンの場合、過給器の作動が正常でない場合、とんでもなく遅い車に感じるものでして、とても乗っていられない。。
その思いからすると、今回のグラプンは過給器機能が欠損しているにも関わらず、そこそこ速く走れてしまうのは先述の圧縮比の違いに繋がる。
9.8という圧縮比は、ターボエンジンとしてはそこそこ高め。
参考までに、ルーテシア3RSはNAエンジンで、2リッター200馬力であり、圧縮比は11.5である。
106s16は1600cc 120馬力であり、圧縮比は10.8というデータである。

ターボに依存し過ぎずに、走れるのには素性・ベースラインが整っている事が明確になるという事が見えてきます。

別の角度で考察すると、圧縮比9.8のターボ車を、むやみやたらとブーストアップをすると超キケン..という事に繋がります。
ブースト抑えて、出力が出る様に設計されている車をブーストアップすれば速くなるが、リスクも上がる。
大切なのは、安定感のある過給器性能を維持する事です。

今回のトラブルの中で、真っ先に疑ったのはウェストゲートの作動が正常か否かでした。
冒頭画像と次の画像は、ウェストゲートの開閉具合を内視鏡カメラで確認している様子。
冒頭は、バルブが開いているが当たり面の痕跡が不均一であるのが確認できる。

シャフトにガタが生じている為、落ち着きのある開閉を実現できていない模様である。
ウェストゲートの精度は意外といい加減でも機能はする為、原因はここでは無いといったん見逃す事に。

ウェストゲートの開閉を担うアクチュエータ―の吸引・加圧を行うと、そこの作動も正常であるものの、ここの消耗具合に違和感を感じた。

本来は丸い穴である、リンケージ接続部が楕円形に消耗しているのが確認できた。

正常な場合のリンケージ接続部の形状は、真ん丸である。

繋がる相手は、タービンの中間部あたりのこの部位。

アクチュエータをテスト品に組み換え、試運転を行うとエッセエッセ本来の性能を取戻し、爆発的に速い!そう感じる状態に復帰しました。
ハイコンプ・ギャレットタービンの組み合わせ、メーカーの行うセッティングは堅実で安心感を感じます。
Written by Hashimoto

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