アース端子が焼けていたのは
カングー2の燃料ポンプ作動不良修理


昨年末にエンジン不始動の為、レッカー搬送で入庫していたルノーカングー2初期型。
エンジンが始動しない場合、色々な原因を疑う必要があります。
基本的な所からチェックをスタートし、燃料圧力が発生していないことが判明。

そういう場合、電源系統のトラブルか燃料ポンプ本体の作動不良に絞り込めます。
結果は燃料ポンプが動いていない為、ポンプ交換が必要となりました。

カングー2の燃料ポンプを交換する場合、室内にサービスホールが無い為にタンク本体を取り外す必要があります。
冒頭の画像は、タンクを外した後のフロワー裏側です。
タンクを降ろす際はタンク内の燃料を抜き取る必要があり、その量によっては抜き取りにも時間を要します。
タイミングが悪く、エンジンが始動しなくなったのは満タン給油直後の出来事でした。。
携行缶や、ペール缶をいくつも用意し抜き取ります。

燃料が入っていなければ、タンク本体はとても軽いので1人でも載せ降ろしは可能です。

外したポンプを見ていると、気になる点を発見しました。

ポンプ本体側の端子がひとつ焼け焦げています。
車輌側ハーネスの電源を調べると、焼け焦げた箇所はポンプ駆動用のアース回路でした。

ハーネス側も同じ様な影響が確認出来ます。

これは、ポンプ本体の作動電流値が上昇した事を意味します。
ポンプ本体は、交換時期を迎えていて、息絶え絶えで作動していた事が想像できます。
それにより、電流値が上昇し発熱を伴い、結果的に端子焼けに至ったのでしょう。

ポンプ本体と、シールリング&キャップを用意し組み替えを行います。

これにより、ポンプ側の端子は正常な状態に戻りますが、車輌側ハーネスをなんとかする必要あり。
端子のみのパーツが手の届くところにあれば良いのですが、電気端子の形状は星の数ほど設定があり、都合の良い物など皆無。。
こういう時、一番間違いが無いのが該当部分のみ配線を直結して結線する運びです。

ポンプ本体の金属端子に対して、配線を直付けします。
車輌側との接続は、別の端子をを用いて行います。
今回の様な事例は、端子が悪いわけでは無くポンプが悪い事が順序としては先です。
何故端子が焼けるか?ですが、電極コネクタは100%の接触では無い為、接触抵抗が少なからず存在します。

端子が新しいうちは、その抵抗は極めて低いのですが、年数経過と共に接圧が低下し、抵抗は増します。
そのタイミングで、電装品の劣化が重なると抵抗増大した箇所には電圧ロスが生じ、それは「発熱」と姿を変えて表に出てきます。
その状況が長時間続くと、端子は熱により焼けますので酸化します。最後には今回の症例のような姿になるという事です。

端子が無ければ、ここまでの状況にはならないのですが、そうするとECU本体内部や、フューズラインで同様の事が起きます。
端子が無いと、部品の取り外しも億劫で仕方なくなりますからね。

ポンプ交換完了し、組み付けを終えた後はポンプからの漏れの有無を確認する為に満タン状態まで給油を行います。
エンジン始動・走行具合に問題が無いことを確認し、完成となります。

今回の症例とほぼ同じ事を、同じタイミングで先輩メカニックが行っていました。
車種はカングー1でしたが、原因は同じ。
1台の車に長く乗る方が増えていますので、今後は一層視野を広くし、車と向き合う必要が出て来くると実感しました。

Written by Hashimoto

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